日本の名短歌 100選

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 「この味がいいね」と君が言ったから
    七月六日はサラダ記念日
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 俵万智「サラダ記念日」より。
  俵万智さんの、この新しい爽やかな短歌に出会った時、 とても気持ち良く新鮮でした。これに触発されて、朗読付きの短歌本を買いました。  興味ある人は一緒に楽しんで頂けたら幸いです。

  • 表紙
  • 1p

(01) 日本の名短歌 100選 表紙 (拡大図あり)

日本の名短歌 表紙(1)


「声に出して味わう日本の名短歌100選」の表紙です。


「朗読CD付
声に出して味わう日本の名短歌100選」
  2004年3月30日
 第1刷発行


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日本の名短歌 表紙(2)


見開きの第1ページ目です。






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(02) 季節 16首(1~16)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

02 季節 (1)
新たしき年の始めの初春の けふ降る雪のいや重け吉事
大伴家持【出典:万葉集】
02 季節 (2)
春過ぎて夏来たるらし 白栲の衣乾したり天の香具山
持統天皇【出典:万葉集】
02 季節 (3)
見る人もなくて散りぬる奥山の もみぢは夜の錦なりけり
紀貫之【出典:古今和歌集】
02 季節 (4)
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
藤原敏行【出典:古今和歌集】
02 季節 (5)
山里の春の夕暮来てみれば 入相の鐘に花ぞ散りける
能因【出典:新古今和歌集】


02 季節 (6)
夕されば野辺の秋風身にしみて 鶉鳴くなり深草の里
藤原俊成【出典:千載和歌集】
02 季節 (7)
寂しさはその色としもなかりけり 槙立つ山の秋の夕暮
寂蓮【出典:新古今和歌集】
02 季節 (8)
山深み春とも知らぬ松の戸に たえだえかかる雪の玉水
式子内親王【出典:新古今和歌集】
02 季節 (9)
風わたる浅茅が末の露にだに 宿りも果てぬ宵の稲妻
藤原有家【出典:新古今和歌集】
02 季節 (10)
人住まぬ不破の関屋の板廂 荒れにしのちはただ秋の風
藤原良経【出典:新古今和歌集】


02 季節 (11)
夕立のなごりばかりの庭たづみ 日ごろもきかぬかはづ鳴くなり
順徳院【出典:玉葉和歌集】
02 季節 (12)
瓶にさす藤の花ぶさみじかければ たゝみの上にとゞかざりけり
正岡子規【出典:竹の里歌】
02 季節 (13)
牡丹花は咲き定まりて静かなり 花の占めたる位置のたしかさ
木下利玄【出典:一路】
02 季節 (14)
ゆく秋の大和の国の薬師寺の 塔の上なる一ひらの雲
佐佐木信綱【出典:新月】
02 季節 (15)
みづうみの氷はとけてなほ寒し 三日月の影波にうつろふ
島木赤彦【出典:太虚集】
02 季節 (16)
夜半さめて見れば夜半さえしらじらと 桜散りおりとどまらざらん
馬場あき子【出典:雪鬼華麗】


(03) 男の恋 9首(17~25)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

03 男の恋 (17)
月やあらぬ春や昔の春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして
在原業平【出典:古今和歌集】
03 男の恋 (18)
逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔は物を思はざりけり
藤原敦忠【出典:拾遺和歌集】
03 男の恋 (19)
由良の門を渡る舟人梶を絶え ゆくへも知らぬ恋の道かな
曾禰好忠【出典:新古今和歌集】
03 男の恋 (20)
忍ぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問うまで
平兼盛【出典:拾遺和歌集】
03 男の恋 (21)
今来んと頼めしことを忘れずは この夕暮れの月や待つらん
藤原秀能【出典:新古今和歌集】


03 男の恋 (22)
君かへす朝の舗石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ
北原白秋【出典:桐の花】
03 男の恋 (23)
たちまちに君の姿を霧とざし 或る楽章をわれは思ひき
近藤芳美【出典:早春歌】
03 男の恋 (24)
かにかくに祇園はこひし 寐るときも枕の下を水のながるる
吉井勇【出典:酒ほがひ】
03 男の恋 (25)
馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで 人戀はば人あやむるこころ
塚本邦雄【出典:感幻楽】


(04) 女の恋 10首(26~35)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

04 女の恋 (26)
わが夫子が来べき夕なり ささがねの蜘蛛の行ひ是夕著しも
衣通郎姫【出典:日本書紀】
04 女の恋 (27)
あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る
額田王【出典:万葉集】
04 女の恋 (28)
朝ごとに我がみるやどのなでしこが 花にも君はありこせぬかも
笠女郎【出典:万葉集】
04 女の恋 (29)
つれづれと空ぞ見らるる 思ふ人天降り来むものならなくに
和泉式部【出典:玉葉和歌集】
04 女の恋 (30)
橘のにほふあたりのうたた寝は 夢も昔の袖の香ぞする
藤原俊成女【出典:新古今和歌集】


04 女の恋 (31)
今や夢昔や夢とまよはれて いかに思へどうつつとぞなき
建礼門院右京大夫【出典:建礼門院右京大夫集】
04 女の恋 (32)
うきも契りつらきも契りよしさらば みなあはれにや思ひなさまし
永福門院【出典:風雅集】
04 女の恋 (33)
かたはらにおく幻の椅子一つ あくがれて待つ夜もなし今は
大西民子【出典:まぼろしの椅子】
04 女の恋 (34)
「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日
俵万智【出典:サラダ記念日】
04 女の恋 (35)
観覧車回れよ回れ想ひ出は 君には一日我には一生
栗木京子【出典:水惑星】


(05) 旅 10首(36~45)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

05 旅 (36)
東の野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月傾きぬ
柿本人麻呂【出典:万葉集】
05 旅 (37)
思ふどち春の山辺にうちむれて そことも言はぬ旅寝してしが
素性【出典:古今和歌集】
05 旅 (38)
風になびく富士の煙の空に消えて ゆくへも知らぬわが思ひかな
西行【出典:新古今和歌集】
05 旅 (39)
行き暮れて木の下陰を宿とせば 花や今宵の主ならまし
平忠度【出典:平家物語】
05 旅 (40)
野に山に浮かれ浮かれて帰るさを 閨まで送る秋の夜の月
太田垣蓮月【出典:海人の刈藻】


05 旅 (41)
おほてらのまろきはしらの月かげを つちにふみつゝものをこそおもへ
会津八一【出典:南京新唱】
05 旅 (42)
あはれあはれここは肥前の長崎か 唐寺の甍にふる寒き雨
斎藤茂吉【出典:あらたま】
05 旅 (43)
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。 この山道を行きし人あり
釈超空【出典:海やまのあひだ】
05 旅 (44)
滝の水は空のくぼみにあらはれて 空ひきおろしざまに落下す
上田三四二【出典:遊行】
05 旅 (45)
たっぷりと真水を抱きてしづもれる 昏き器を近江と言へり
河野裕子【出典:桜森】


(06) 命 9首(46~54)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

06 命 (46)
花の色は移りにけりないたずらに わが身世にふるながめせし間に
小野小町【出典:古今和歌集】
06 命 (47)
有明の月のゆくへをながめてぞ 野寺の鐘は聞くべかりける
慈円【出典:新古今和歌集】
06 命 (48)
思ふことさしてそれとはなきものを 秋の夕べを心にぞ問ふ
宮内卿【出典:新古今和歌集】
06 命 (49)
ともし火に我もむかはず 灯も我にむかはずおのがまにまに
光厳院【出典:光厳院御集】
06 命 (50)
霞立つ長き春日を子どもらと 手まりつきつつこの日暮らしつ
良寛【出典:はちすの露】


06 命 (51)
紅葉はかぎり知られず散り来れば わがおもひ梢のごとく繊しも
前川佐美雄【出典:大和】
06 命 (52)
肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと 告げむとしつつたわむ言葉は
岡井隆【出典:朝狩】
06 命 (53)
かなしみは明るさゆゑにきたりけり 一本の樹の翳らいにけり
前登志夫【出典:子午線の繭】
06 命 (54)
滝、三日月、吊り橋、女体 うばたまの 闇にしずかに身をそらすもの
高野公彦【出典:天泣】


(07) 海・山 9首(55~63)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

07 海・山 (55)
田子の浦ゆうち出でて見れば 真白にそ富士の高嶺に雪は降りける
山部赤人【出典:万葉集】
07 海・山 (56)
柴の戸に入日の影はさしながら いかにしぐるる山べなるらん
藤原清輔【出典:新古今和歌集】
07 海・山 (57)
見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮
藤原定家【出典:新古今和歌集】
07 海・山 (58)
大海の磯もとどろに寄する波 割れて砕けて裂けて散るかも
源実朝【出典:金槐和歌集】
07 海・山 (59)
つもれただ入りにし山の嶺の雪 うき世にかへる道もなきまで
頓阿【出典:続千載和歌集】


07 海・山 (60)
自然がずんずん体の中を通過する ---山、山、山
前田夕暮【出典:水源地帯】
07 海・山 (61)
たどりゆく真砂の尾根にひつそりと 砂浴ぶかこのひとつ雷鳥
中西悟堂【出典:安達太良】
07 海・山 (62)
人の住む国辺を出でで白波が 大地両分けしはてに来にけり
伊藤左千夫【出典:左千夫歌集】
07 海・山 (63)
われらかつて魚なりし頃かたらひし 藻の蔭に似るゆふぐれ来たる
水原紫苑【出典:びあんか】


(08) 家族・友人 10首(64~73)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

08 家族・友人 (64)
八雲立つ出雲八重垣妻ごみに 八重垣作るその八重垣を
須佐之男命【出典:古事記】
08 家族・友人 (65)
銀も金も玉も何せむに まされる宝子に及かめやも
山上憶良【出典:万葉集】
08 家族・友人 (66)
人の親の心は闇にあらねども 子を思ふ道に惑ひぬるかな
藤原兼輔【出典:後撰和歌集】
08 家族・友人 (67)
春来てぞ人もとひける山里は 花こそ宿のあるじなりけれ
藤原公任【出典:拾遺和歌集】
08 家族・友人 (68)
其子等に捕へられむと母が魂 螢となりて夜を来たるらし
窪田空穂【出典:土を眺めて】


08 家族・友人 (69)
逝きし子は蒼空に咲くばらにして 死の誘惑の甘きことあり
五島美代子【出典:いのちありけり】
08 家族・友人 (70)
春のめだか雛の足あと山椒の実 それらのものの一つかわが子
中城ふみ子【出典:乳房喪失】
08 家族・友人 (71)
ただひとり吾より貧しき友なりき 金のことにて交絶てり
土屋文明【出典:往還集】
08 家族・友人 (72)
たはむれに懐中電灯呑まむとぞ する父親を子がみて泣きぬ
小池光【出典:日々の思い出】
08 家族・友人 (73)
子供とは球体ならんストローを 吸ふときしんと寄り目となりぬ
小島ゆかり【出典:月光公園】


(09) 国・政治 9首(74~82)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

09 国・政治 (74)
倭は国のまほろばたたなづく青垣 山隠れる倭し美し
倭建命【出典:古事記】
09 国・政治 (75)
わくらばに問ふ人あらば 須磨の浦に藻塩たれつつわぶと答えよ
在原行平【出典:古今和歌集】
09 国・政治 (76)
東風吹かばにほひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな
菅原道真【出典:拾遺和歌集】
09 国・政治 (77)
奥山のおどろが下も踏み分けて 道ある世ぞと人に知らせん
後鳥羽院【出典:新古今和歌集】
09 国・政治 (78)
咲きやらぬ籬の萩の露を置きて 我ぞうつろふももしきの秋
伏見院【出典:玉葉和歌集】


09 国・政治 (79)
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし 身捨つるほどの祖国はありや
寺山修司【出典:空には本】
09 国・政治 (80)
あなたは勝つものとおもつてゐましたか と老いたる妻のさびしげにいふ
土岐善麿【出典:夏草】
09 国・政治 (81)
焼跡に溜まれる水と帚草 そを囲りつつただよふ不安
宮柊二【出典:小紺珠】
09 国・政治 (82)
またひとり顔なき男あらはれて 暗き踊りの輪をひろげゆく
岡野弘彦【出典:滄浪歌】


(10) 酒 7首(83~89)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

10 酒 (83)
なかなかに人とあらずは 酒壺になりにてしかも酒に染みなむ
大伴旅人【出典:万葉集】
10 酒 (84)
酒杯に梅の花浮け思ふどち 飲みての後は散りぬともよし
大伴坂上郎女【出典:万葉集】
10 酒 (85)
白玉の歯にしみとほる 秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ
若山牧水【出典:路上】
10 酒 (86)
雨荒く降り来し夜更け酔い果てて 寝んとす友よ明日あらば明日
佐佐木幸綱【出典:直立せよ 一行の詩】


10 酒 (87)
ひとり飲むこの夜の酒や 何すれぞかなしきまでに心澄みゆく
吉野秀雄【出典:苔径集】
10 酒 (88)
大方はおぼろになりて 我が目には白き盃一つ残れる
石榑千亦【出典:歌集未収録】
10 酒 (89)
電車にて酒店加六に行きしかど それより後は泥のごとしも
佐藤佐太郎【出典:歩道】


(11) 青春・老 11首(90~100)


出典 (株)中経出版「声に出して味わう日本の名短歌」付属CD 檀 ふみ

11 青春・老 (90)
老いにける渚の松の深緑 沈める影をよそにやは見る
源順【出典:新古今和歌集】
11 青春・老 (91)
ながむべき残りの春をかぞふれば 花とともにも散る涙かな
俊恵【出典:新古今和歌集】
11 青春・老 (92)
その子二十櫛にながるる黒髪の おごりの春のうつくしきかな
与謝野晶子【出典:みだれ髪】
11 青春・老 (93)
東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて蟹とたはむる
石川啄木【出典:一握の砂】
11 青春・老 (94)
少年は少年とねむるうす青き 水仙の葉のごとくならびて
葛原妙子【出典:原牛】
11 青春・老 (95)
火祭りの輪を抜けきたる青年は 霊を吐きしか死顔をもてり
春日井建【出典:未青年】


11 青春・老 (96)
血と雨にワイシャツ濡れている無援 ひとりへの愛うつくしくする
岸上大作【出典:意志表示】
11 青春・老 (97)
生きがたき青春過ぎて死にがたき 壮年にあふ月光痛し
伊藤一彦【出典:森羅の光】
11 青春・老 (98)
きみに逢う以前のぼくに逢いたくて 海へのバスに揺られていたり
永田和宏【出典:メビウスの地平】
11 青春・老 (99)
こんなにも湯呑茶碗はあたたかく しどろもどろに吾はおるなり
山崎方代【出典:左右口】
11 青春・老 (100)
おいとまをいただきますと戸をしめて 出てゆくやうにゆかぬなり生は
斎藤史【出典:ひたくれなゐ】

           

a086004 一見 哲夫
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